初めて電子納品を任された時、泣きそうになった。
「電子納品よろしく」と所長に言われて、国交省のガイドラインを開いた。200ページ超え。フォルダ名のルール、ファイル名の命名規則、XMLの管理ファイル——何が書いてあるのか、半分も理解できなかった。
しかも周りに聞いても「俺もよく分からん。前任者が作ったフォルダをコピーして中身を入れ替えた」という答えしか返ってこない。ネットで調べても、出てくるのはガイドラインの転載みたいな堅い記事ばかり。「で、結局何をすればいいの?」が分からない。
結局、チェックソフトでエラーを出しまくりながら、2週間かけてなんとか形にした。あの2週間の苦労を、後輩には味わわせたくない。
この記事では、電子納品の流れを**「最低限これだけ分かっていれば乗り切れる」**レベルで解説する。ガイドラインの全項目を網羅するのではなく、現場監督が実際にやることに絞る。
電子納品とは?——3行で理解する
電子納品は、工事の完成図書(報告書・図面・写真など)を、紙ではなくデータで発注者に提出すること。
データの形式やフォルダ構成は国のガイドラインで決まっている。勝手な構成で提出しても受け取ってもらえない。
つまり、「決められたルール通りにデータを整理してCDやオンラインで提出する」のが電子納品だ。
なぜ電子納品が必要なのか
紙の完成図書の問題
昔は完成図書を全て紙で提出していた。図面はA1で印刷し、写真は台帳にして製本し、報告書はファイリングして、段ボール何箱もの書類を発注者に届けていた。
紙の問題は明白だ。場所を取る、探せない、劣化する。20年前の工事の完成図書を倉庫から見つけ出すのに半日かかる、という話は珍しくない。
電子納品のメリット
データなら検索できるし、場所を取らないし、劣化しない。「あの工事の配筋図が見たい」と思ったら、フォルダを開くだけで済む。
さらに、将来の維持管理(補修や点検)の時に、過去の工事データにすぐアクセスできる。BIM/CIMの時代になれば、電子納品データが3Dモデルと紐付いて、さらに活用の幅が広がる。
BIM/CIMについては「BIM/CIMとは?」に書いた。
電子納品の全体像
電子納品は大きく分けて5つのステップで進む。
- 事前協議 → 発注者と納品の仕様を決める
- データ作成 → 工事中に報告書・図面・写真を整備する
- フォルダ整理 → ガイドラインに沿ったフォルダ構成に整理する
- チェック → チェックソフトでエラーがないか確認する
- 提出 → CDまたはオンラインで発注者に提出する
この5ステップを順番に解説する。
STEP 1:事前協議——最初が一番大事
電子納品で一番大事なのは、工事の最初に発注者と仕様を決めること。最後になって「フォーマットが違う」と言われたら、全部やり直しになる。
確認すべきこと
① 適用する基準 国交省の基準か、自治体独自の基準か。国交省の直轄工事なら「工事完成図書の電子納品等要領」が基本。自治体の工事は、その自治体のガイドラインに従う。自治体によってルールが違うので、必ず確認する。
② 提出するデータの範囲 全ての書類を電子納品するのか、写真だけ電子納品して報告書は紙で出すのか。工事の規模や発注者の方針によって異なる。
③ 提出メディア CD-Rで提出するのか、DVDか、オンライン(電子納品保管管理システム等)か。最近はオンライン提出が増えているが、CDで提出するケースもまだある。
④ ファイル形式 図面はSXF形式(P21またはSFC)で提出するのが一般的。報告書はPDF。写真はJPEG。ただし発注者によって指定が異なる場合があるので確認する。
事前協議チェックシートを使う
国交省のサイトに事前協議チェックシートのテンプレートがある。これを使って発注者と打ち合わせすると、確認漏れを防げる。
自分が初めて電子納品をやった時は、この事前協議をサボった。「たぶん前の工事と同じだろう」と思って省略したら、フォルダ構成の基準が前回と変わっていて、最後に大量の修正が発生した。事前協議は絶対に省略するな。
STEP 2:データ作成——工事中にコツコツ準備する
電子納品のデータは、工事が終わってから一気に作るものではない。工事中にコツコツ整備しておくのが鉄則だ。
写真データ
工事写真は電子納品の中で最もボリュームが大きい部分。電子小黒板アプリで撮影していれば、写真データは自動的に整理されている。
蔵衛門やPhotoManagerなどの写真管理ソフトを使っている場合、電子納品用のデータ出力機能がある。ソフトの機能に任せるのが楽。
電子小黒板アプリの選び方は「電子小黒板アプリおすすめ6選」を参考にしてほしい。
図面データ
完成図面はCADで作成し、SXF形式(.p21 または .sfc)で保存する。AutoCADやJw_cadからSXF形式に変換できる。
注意点:SXF形式に変換した時にレイヤーや線種が崩れることがある。変換後に必ず確認すること。SXFブラウザ(無料で配布されている)で表示を確認するのがおすすめ。
報告書データ
施工計画書、品質管理記録、出来形管理図、安全管理記録などの報告書類。PDF形式で作成する。
WordやExcelで作った書類をPDFに変換して保存する。この時、ファイルサイズが大きすぎないか注意。解像度が無駄に高い画像が埋め込まれていると、ファイルが数十MBになることがある。
STEP 3:フォルダ整理——ルール通りに並べる
電子納品のフォルダ構成は、ガイドラインで厳密に決まっている。1文字でも違うとチェックソフトでエラーになる。
基本的なフォルダ構成(国交省の場合)
WORK(工事フォルダ)
├── DRAWINGF(図面)
├── PHOTO(写真)
│ ├── PIC(写真ファイル)
│ └── DRA(参考図)
├── BORING(地質データ)
├── OTHRS(その他)
│ ├── ORGnnn(オリジナルファイル)
│ └── ...
├── INDEX_C.XML(工事管理ファイル)
├── PHOTO.XML(写真管理ファイル)
├── DRAWINGF.XML(図面管理ファイル)
└── ...
フォルダ名は半角英数字の大文字。「Photo」や「photo」ではなく「PHOTO」。このルールを間違えるだけでエラーになる。
XMLの管理ファイル
各フォルダにXML形式の管理ファイルが必要。これが電子納品の中で一番ややこしい部分だ。
XMLファイルには、工事名称、受注者名、工期、各ファイルの説明情報などを記述する。手書きでXMLを作る必要はない。写真管理ソフトや電子納品支援ソフトが自動生成してくれる。
自分が最初に泣きそうになったのも、このXMLを手動で編集しようとしたからだ。ソフトに任せれば一瞬で終わる。手動でやろうとすると地獄を見る。
電子納品支援ソフトを使う
フォルダ構成やXMLの作成は、電子納品支援ソフトを使うのが現実的だ。
| ソフト名 | 特徴 |
|---|---|
| 蔵衛門御用達 | 写真管理+電子納品出力が一体 |
| PhotoManager | 写真管理+電子納品出力 |
| 写管屋 | ダットジャパンの写真管理ソフト |
| CALS Manager | 電子納品専用の支援ソフト |
| デキスパート | 施工管理全般+電子納品対応 |
会社で使っている写真管理ソフトの電子納品機能を使うのが一番楽。蔵衛門を使っているなら蔵衛門御用達の電子納品機能、PhotoManagerならPhotoManagerの電子納品機能をそのまま使えばいい。
STEP 4:チェック——提出前に必ずやる
データを作ったら、提出前にチェックソフトでエラーを確認する。これを省略すると、発注者から差し戻されて恥ずかしい思いをする。
チェックソフト
国交省が無償で配布している**「電子納品チェックシステム」**を使う。国交省のサイトからダウンロードできる。
チェックソフトにデータを読み込ませると、以下を自動チェックしてくれる:
- フォルダ構成がガイドラインに沿っているか
- ファイル名の命名規則が正しいか
- XMLの記述にエラーがないか
- 必須項目が抜けていないか
よくあるエラーと対処法
エラー:「フォルダ名が不正です」 原因:フォルダ名が小文字になっている、全角文字が混ざっている。 対処:フォルダ名を半角大文字英数字に修正する。
エラー:「XMLの必須項目が未入力です」 原因:工事名称や工期などの必須項目が空欄のまま。 対処:電子納品支援ソフトで該当項目を入力し、XMLを再出力する。
エラー:「ファイル名が規則に合致しません」 原因:写真ファイル名に日本語が入っている、ファイル名が長すぎる。 対処:ガイドラインの命名規則に従ってリネームする。写真管理ソフトの一括リネーム機能を使うと楽。
エラー:「ファイルサイズが大きすぎます」 原因:写真の解像度が必要以上に高い、PDFに高解像度画像が埋め込まれている。 対処:画像を適切な解像度にリサイズする。工事写真は一般的に100万〜300万画素程度で十分。
自分が初めてチェックした時はエラーが87件出た。気が遠くなったが、1つずつ潰していけば3時間くらいで全部解消できた。エラーの8割はファイル名とフォルダ名の問題だったので、最初からルールを守っていれば発生しないものばかりだった。
STEP 5:提出——最終仕上げ
チェックソフトでエラーがゼロになったら、いよいよ提出だ。
CD-Rで提出する場合
- CD-Rに書き込む(DVD-Rの場合もある)
- ラベルに工事名・受注者名・提出日を記載する(直接印刷またはラベルシール)
- 正副2枚作成するのが一般的
- ケースに入れて提出
CD-Rへの書き込み時に**「セッションを閉じる」**こと。セッションを開いたままだと、別のPCで読めないことがある。
オンラインで提出する場合
発注者が指定するシステム(電子納品保管管理システムなど)にアップロードする。アップロード方法はシステムによって異なるので、マニュアルに従う。
提出後のバックアップ
提出したデータは必ず社内にもバックアップを残す。提出後に「あのデータもう一回見せて」と言われることがある。CD-Rのコピーを社内に保管するか、サーバーにデータを残しておく。
電子納品で失敗しないためのコツ
コツ①:工事の最初から電子納品を意識する
完成間際になって慌てて電子納品の準備をするのが一番きつい。工事の初日から「最後に電子納品する」ことを意識して、データを整備していく。
特に写真。工事の序盤から電子小黒板アプリで撮影・整理しておけば、最後は出力するだけで済む。
コツ②:前の工事の電子納品データを参考にする
会社に過去の電子納品データが残っていれば、それを参考にするのが一番早い。フォルダ構成やXMLの書き方を、実例を見ながら真似する。
自分も前任者のデータをフォルダごとコピーして、中身を入れ替える方法で2回目以降は楽になった。
コツ③:チェックは早めに回す
完成直前ではなく、工事の中間段階でチェックソフトを回してみる。早い段階でエラーの傾向を把握しておけば、残りの工期で修正できる。
コツ④:分からなかったら発注者に聞く
ガイドラインを読んでも分からないことは、発注者に直接聞くのが一番早い。「電子納品のこの部分、どうすればいいですか?」と聞いて怒る発注者はいない。むしろ、間違ったまま提出される方が迷惑だ。
まとめ
電子納品は、最初は大変に感じるが、やることは決まっている。
事前協議→データ作成→フォルダ整理→チェック→提出。 この5ステップを押さえておけば、迷わない。
一番大事なのは「工事の最初から準備すること」と「ソフトに任せること」。XMLを手書きする必要はないし、フォルダを手動で作る必要もない。写真管理ソフトと電子納品支援ソフトを使えば、大部分は自動化できる。
電子小黒板で写真を撮る段階から、電子納品を見据えた運用をしておけば、最後の苦労は最小限で済む。電子小黒板アプリは「電子小黒板アプリおすすめ6選」を参考にしてほしい。
i-Constructionの全体像は「i-Constructionとは?」にまとめている。
この記事を書いた人
SEKOBASE編集部 施工管理技士として現場で働く代表が運営する、建設業専門のテック情報メディア。「現場を知る者が、現場を変える」をモットーに、蔵衛門・電子小黒板・CCUSなどの現場DXツールの使い方から、施工管理技士試験の対策まで、現場目線の情報を発信しています。


