「i-Constructionって何ですか?」
正直、最初に聞いた時は「また国が横文字つけてなんかやってるな」くらいの印象だった。現場で毎日土を掘って鉄筋を組んでいる人間にとって、国の施策はどこか遠い話に聞こえる。
でも実際は、i-Constructionはすでに自分たちの現場を変え始めている。電子小黒板、CCUS、ICT施工、BIM/CIM——最近よく聞くようになったこれらの言葉は、全部i-Constructionの傘の下にある。
つまり、知らないうちに自分たちはi-Constructionの中にいる。
この記事では、i-Constructionを「国の偉い人が決めた制度」ではなく、**「自分の現場の仕事がどう変わるか」**という目線で解説する。
i-Constructionを一言で言うと
建設業の生産性を上げるための国土交通省の取り組み。
2016年にスタートした。目標はシンプルで、「建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させる」。ICT(情報通信技術)を使って、測量・設計・施工・検査の全工程を効率化しようという話だ。
「2割向上」と聞くとピンとこないかもしれないが、身近な例で言うとこうなる:
- 丁張りを設置して人力で測量していたのが、ドローンで30分で終わる
- 手書きの黒板で写真を撮っていたのが、電子小黒板で半分の時間で撮れる
- 設計図面を紙で配っていたのが、3Dモデルで全員がリアルタイムで見られる
- 出来形の検査で200箇所測っていたのが、3Dスキャンで面的に一発で計測できる
どれも「楽になる」方向の変化だ。i-Constructionは、現場の人間にとっては基本的に味方の施策だと思っていい。
i-Constructionの3本柱
i-Constructionには大きく3つの柱がある。
① ICTの全面的な活用
これが一番インパクトが大きい。従来は人の手でやっていた作業を、ICT技術で置き換える。
| 工程 | 従来のやり方 | ICT活用後 |
|---|---|---|
| 測量 | トータルステーション+人力 | ドローン測量・GNSS |
| 設計 | 2D図面(紙) | 3Dモデル(BIM/CIM) |
| 施工 | 丁張り+オペレーターの感覚 | マシンコントロール・マシンガイダンス |
| 出来形管理 | 巻き尺+人力測定 | 3Dスキャナー・ドローン |
| 写真管理 | 手書き黒板+デジカメ | 電子小黒板アプリ |
| 検査 | 現地立会+紙の書類 | リモート検査・電子納品 |
自分の現場で一番身近なのは電子小黒板だ。「蔵衛門使ってください」と言われた時、それがi-Constructionの一環だとは思っていなかった。でも、電子小黒板の普及はi-Constructionの成果の一つだ。
電子小黒板について詳しくは「電子小黒板アプリおすすめ6選」にまとめている。
② 規格の標準化
建設業界には「発注者によってルールが違う」という問題がずっとあった。
同じ工事写真の撮り方でも、国交省と自治体で書式が違う。電子納品のフォーマットも微妙に違う。これが現場の負担を増やしていた。
i-Constructionでは、規格やルールを統一していく方向で動いている。電子納品の基準統一、写真管理の基準統一、BIM/CIMのデータ形式統一——まだ道半ばだが、少しずつ「どの発注者でも同じやり方でOK」に近づいている。
③ 施工時期の平準化
建設業には「年度末に工事が集中する」という古くからの問題がある。3月になると予算消化のために工事が殺到し、4〜6月は閑散期になる。
i-Constructionでは、この繁閑の差を減らすことも目標にしている。具体的には、債務負担行為の活用や早期発注の推進など。
現場の人間にとっては、「3月の地獄のような忙しさ」が少しでも緩和されるならありがたい話だ。ただ正直、現場レベルではまだあまり実感がない。
i-Constructionで現場の何が変わったか
制度の話だけでは実感が湧かないので、自分の現場で実際に変わったことを具体的に書く。
変化①:電子小黒板が当たり前になった
入社した頃はまだ手書きの黒板を使っている現場があったが、今はほとんど電子小黒板だ。新しい現場に入った時、「手書き黒板で」と言われたら逆に驚くレベルになった。
電子小黒板は写真撮影の時間を半減させた。自分は蔵衛門を使っているが、手書き時代と比べて1日30分〜1時間は時短できている。年間で200時間以上。これだけで「i-Constructionやってよかった」と言える。
変化②:ICT施工の現場が増えた
自分はまだICT施工の現場を担当したことはないが、同期で経験した人はいる。話を聞くと、「丁張りを立てなくていい」のが革命的だったそうだ。
従来は測量して丁張り(目印の杭と板)を大量に設置してから掘削していたが、ICT施工ではマシンガイダンスで重機のオペレーターが画面を見ながら掘る。丁張りの設置と撤去の手間が丸ごとなくなる。
ただし、ICT施工に対応した重機とオペレーターが必要なので、すべての現場で使えるわけではない。大規模な土工(切土・盛土)の現場で特に効果が大きい。
変化③:ドローンを見かけるようになった
測量にドローンを使う現場が増えた。従来の測量では、2〜3人で数日かかっていた範囲が、ドローンなら半日で完了する。
自分はドローンの操縦はできないが、測量会社がドローンを飛ばしているのを見る機会は増えた。撮影した写真から3D点群データを作って、設計データと重ね合わせる——という流れだ。
将来的にはドローン操縦のスキルがあると、施工管理としての市場価値が上がるかもしれない。
変化④:CCUSの運用が始まった
CCUS(建設キャリアアップシステム)もi-Constructionの一環だ。現場の入口にカードリーダーが置かれて、技能者がICカードをタッチして入退場する。
CCUSについては「CCUS登録方法を分かりやすく解説」に詳しく書いた。
i-Constructionのこれから
i-Constructionは2016年にスタートしてから進化を続けている。今後、現場レベルでさらに影響が出そうなトピックを整理する。
BIM/CIMの原則適用
BIM(Building Information Modeling)/ CIM(Construction Information Modeling)は、3Dモデルで建設プロジェクト全体を管理する手法。
2023年度から国交省の直轄工事では原則適用が始まっている。今はまだ大規模工事が中心だが、徐々に中小規模の工事にも広がっていく見込みだ。
施工管理としては、3Dモデルを読める・扱えるスキルが今後求められるようになる。2D図面しか読めない時代は終わりつつある。
リモート検査の拡大
コロナ禍で一気に広がったリモート検査。カメラを使って発注者が遠隔で立会検査を行う仕組みだ。
現場に来てもらわなくていいので、検査のための段取り(待ち時間や案内)が減る。一方で、カメラの角度や通信環境など、新しい課題もある。
自動施工・自律施工
まだ実験段階だが、無人の重機が自動で施工する技術の研究が進んでいる。完全な無人化は先の話だが、「オペレーター1人が複数台の重機を遠隔で操作する」レベルは現実味を帯びてきた。
災害現場など、人が入れない危険な場所での施工に特に期待されている。
若手施工管理がi-Constructionにどう向き合うべきか
「i-Constructionは分かった。で、自分は何をすればいいの?」という話。
やるべきこと①:電子小黒板を使いこなす
まだ手書き黒板を使っているなら、今すぐ電子小黒板に切り替えてほしい。これがi-Constructionの入口であり、一番手っ取り早い生産性向上だ。
蔵衛門、ミライ工事2、SiteBox——どれでもいい。1つ使えるようになれば、i-Constructionの世界に片足を突っ込んだことになる。
各アプリの使い方ガイド:
やるべきこと②:CCUSを理解しておく
CCUSは今後さらに普及が進む。登録方法や運用方法を理解しておけば、現場で困ることがない。「CCUS登録方法」を参考にしてほしい。
やるべきこと③:3Dモデルに触れておく
BIM/CIMが広がる中で、3Dモデルを全く触ったことがない施工管理は不利になる。今すぐ業務で使う場面はなくても、無料のビューワーソフトで3Dモデルを開いて回してみるくらいはやっておいて損はない。
やるべきこと④:資格を取る
i-Constructionがどれだけ進んでも、施工管理技士の資格の価値はなくならない。むしろ、ICTスキル+資格の組み合わせが最強だ。
資格については「施工管理技士の種類と難易度」、勉強法は「2級土木施工管理技士の勉強法」を参考にしてほしい。
まとめ
i-Constructionは、建設業の生産性を上げるための国の取り組みだ。電子小黒板、ICT施工、CCUS、BIM/CIM——これらは全部i-Constructionの一部。
難しく考える必要はない。自分の現場で「これ便利になったな」と感じることがあれば、それがi-Constructionの成果だ。
若手の施工管理にとって、i-Constructionは追い風でしかない。ICTスキルと資格を両方持っていれば、市場価値は確実に上がる。「国がやっている遠い話」ではなく、「自分のキャリアを後押ししてくれる流れ」として捉えてほしい。
この記事を書いた人
SEKOBASE編集部 施工管理技士として現場で働く代表が運営する、建設業専門のテック情報メディア。「現場を知る者が、現場を変える」をモットーに、蔵衛門・電子小黒板・CCUSなどの現場DXツールの使い方から、施工管理技士試験の対策まで、現場目線の情報を発信しています。


