出来形管理の作業を思い出してほしい。
現場で測定値をメモ帳に書く。事務所に戻ってExcelに転記する。写真を整理して、測定値と紐付ける。出来形管理図を作る。——この「測る→書く→打ち込む→整理する」の繰り返しが、施工管理の時間を地味に、でも確実に食っている。
SiteBoxを使い始めた時、一番驚いたのはこの繰り返しがほぼ消えたことだ。
現場でタブレットに測定値を入力する。その場で電子小黒板付きの写真を撮る。測定値と写真が自動で紐付く。事務所に戻ったら、データを取り込むだけで出来形管理図のベースができている。「メモ帳に書いてExcelに転記」という工程が丸ごとなくなった。
SiteBoxは、他の電子小黒板アプリとは毛色が違う。「黒板付き写真を撮るアプリ」ではなく、**「出来形管理・品質管理と写真撮影を一体化したアプリ」**だ。この記事では、その使い方を現場目線で解説する。
SiteBoxとは?——他のアプリとの決定的な違い
SiteBoxは、株式会社MetaMoJiが提供する施工管理アプリ。
電子小黒板アプリは他にもたくさんあるが、SiteBoxが根本的に違うのは出来形管理・品質管理の機能が最初から組み込まれていること。
普通の流れ:
- 電子小黒板アプリで写真を撮る
- 測定値はメモかExcelに別で記録する
- 事務所で写真と測定値を突き合わせて帳票を作る
SiteBoxの流れ:
- SiteBoxで測定値を入力しながら写真を撮る
- 終わり
大げさに聞こえるかもしれないが、「2」が存在しないのは本当に大きい。現場と事務所の二重作業がなくなる。
【初日】インストールと工事の準備
STEP 1:アプリを入手する
SiteBoxはiOS・Android両対応。App StoreまたはGoogle Playからインストールする。
利用にはライセンスが必要。蔵衛門と同様に、会社で契約しているケースが多い。管理者からライセンス情報をもらってログインする。
MetaMoJiの公式サイトからトライアル版を申し込むこともできるので、まず試してみたい場合はそちらから。
STEP 2:工事情報を登録する
工事名、施工場所、発注者名、工期などの基本情報を入力する。ここまでは他のアプリと同じだ。
SiteBoxが違うのは、ここから**「測定項目」を設定する**ステップがあること。
例えば側溝の設置工事なら:
- 幅(設計値:300mm、規格値:±30mm)
- 高さ(設計値:300mm、規格値:±30mm)
- 延長(設計値:10,000mm、規格値:-200mm)
この設計値と規格値を最初に登録しておく。すると、現場で実測値を入力した時に自動で合否判定してくれる。「この測定値は規格内か?」をいちいち計算しなくていい。
STEP 3:設計図面を取り込む
SiteBoxにはPDFの図面を取り込む機能がある。取り込んだ図面上に測定箇所をマッピングできるので、「この測定値は構造物のどの部分か」が視覚的に分かる。
図面の取り込みは初日にやっておくと、現場で測定する時にスムーズだ。
【1週間目】現場で測定しながら撮影する
ここがSiteBoxの真骨頂。
出来形測定と写真撮影を同時に行う
現場での流れ:
- SiteBoxを開いて、今日の測定箇所を選択する
- 実測値を入力する(例:幅302mm)
- 自動で規格値と比較される(302mmは設計値300mm±30mm以内→合格)
- そのまま電子小黒板付きの写真を撮る
- 測定値が黒板に自動反映される
ポイントは4と5だ。測定値を入力した瞬間に、黒板の内容にその数値が反映される。手動で黒板に測定値を打ち直す必要がない。これだけで、1箇所あたりの作業時間が半分になる。
手書き黒板+メモ帳時代は:
- メモ帳に測定値を書く → 黒板に測定値を書く → 写真を撮る → 事務所でExcelに転記
SiteBoxなら:
- 測定値を入力 → 写真を撮る → 終わり
最初は「アプリに入力するのって、メモに書くのと同じくらい手間じゃない?」と思った。でも実際にやってみると、「転記」が消えることの効果がデカい。メモ→黒板→Excelの三重転記が、アプリ入力の1回で済む。転記ミスもゼロになる。
品質管理データも同時に記録する
出来形だけでなく、コンクリートの品質管理(スランプ値、空気量、圧縮強度など)もSiteBoxで記録できる。
生コン打設の日に、スランプ試験の値をSiteBoxに入力して、そのまま試験の写真を撮る。値と写真が紐付いた状態で保存されるので、後から「このスランプ値はどの打設の時のだっけ?」と探す手間がなくなる。
【2週間目】手書きメモ機能を使う
SiteBoxの開発元であるMetaMoJiは、手書きノートアプリ「MetaMoJi Note」で知られている。その手書き技術がSiteBoxにも搭載されている。
図面に直接書き込む
取り込んだ図面の上に、指やスタイラスペンで直接書き込みができる。
使い方の例:
- 測定箇所に丸をつけて「済」と書く
- 変更があった部分に赤ペンで修正内容をメモする
- 打ち合わせ中にその場で図面に書き込む
現場で紙の図面にボールペンで書き込む感覚そのまま。ただし、デジタルなので書き間違えたら消せるし、拡大もできる。
自分が一番便利だと感じたのは、打ち合わせの場で発注者と一緒に図面を見ながら書き込めること。紙だと「その図面コピーして持ってきて」となるが、タブレットならその場でズームして書き込んで、スクリーンショットで共有できる。
【1ヶ月目】データの出力と帳票作成
出来形管理図の自動生成
SiteBoxに蓄積された測定データから、出来形管理図を自動生成できる。
設計値・規格値・実測値のグラフが自動で描かれる。手動でExcelに数値を打ち込んでグラフを作っていた頃と比べると、作業時間は1/3以下になった。
ただし、自動生成された帳票はそのまま提出できるケースと、多少の手直しが必要なケースがある。発注者のフォーマット指定がある場合は、出力したデータをExcelに取り込んで微調整する。
電子納品への対応
SiteBoxは国交省の電子納品基準に対応している。撮影した写真と測定データを、JACIC準拠の形式で書き出せる。
他ソフトとの連携
SiteBoxのデータは、MetaMoJiの他の施工管理ツールとも連携できる。また、CSV形式でエクスポートすれば、ExcelやGoogleスプレッドシートでも加工可能。
蔵衛門Pad・ミライ工事2との使い分け
3つのアプリの位置づけを整理する。
| 観点 | 蔵衛門Pad | ミライ工事2 | SiteBox |
|---|---|---|---|
| メインの用途 | 写真撮影・管理 | 写真撮影(入門) | 出来形管理+写真 |
| 料金 | 有料 | 無料プランあり | 有料 |
| 出来形管理 | ×(別ソフト) | × | ○(内蔵) |
| 品質管理 | ×(別ソフト) | × | ○(内蔵) |
| 手書き機能 | △ | × | ○(MetaMoJi技術) |
| 写真管理の完成度 | ◎ | ○ | ○ |
| 公共工事の実績 | ◎(最多) | △ | ○ |
シンプルに言うと:
- 写真管理が最優先 → 蔵衛門Pad
- まず無料で試したい → ミライ工事2
- 出来形管理を効率化したい → SiteBox
SiteBoxの強みは「出来形管理と写真撮影の一体化」に尽きる。逆に、写真管理だけでいいなら蔵衛門の方が実績もテンプレートも豊富だ。
蔵衛門の使い方は「蔵衛門Padの使い方ガイド」、ミライ工事2の使い方は「ミライ工事2の使い方ガイド」に書いている。
SiteBoxを使う上でのコツ
コツ①:測定項目は最初にまとめて登録する
工事が始まってから「あの項目も登録しなきゃ」と追加していくと、データの管理が煩雑になる。施工計画書を作るタイミングで、測定項目をSiteBoxにも登録しておく。
自分は施工計画書の出来形管理基準をそのままSiteBoxに転記していた。最初に30分かけて設定すれば、現場での作業が毎日5分短くなる。1ヶ月で150分の節約。確実に元が取れる。
コツ②:タブレットの方が使いやすい
SiteBoxはスマホでも使えるが、出来形管理の入力画面はタブレットの方が圧倒的に見やすい。図面の書き込みもタブレットの画面サイズがないと厳しい。
iPadの10インチクラスがおすすめ。現場で持ち歩くにはちょうどいいサイズだ。防水・耐衝撃ケースは必須。
コツ③:入力は現場でやりきる
「後で事務所で入力しよう」は禁物。SiteBoxの最大のメリットは「現場で完結する」ことなのに、事務所に持ち帰ったら意味がない。
測定したらその場で入力、その場で撮影。 これを徹底するだけで、夕方の事務作業が劇的に減る。
コツ④:バッテリー対策は万全に
タブレットで1日中アプリを使うと、バッテリーがかなり消耗する。大容量のモバイルバッテリー(20,000mAh以上)を現場に持っていくこと。車のシガーソケットから充電できるケーブルも用意しておくと安心。
よくあるトラブルと対処法
「規格値を間違えて登録した」
最初の設定で規格値を誤入力すると、合否判定が全部ずれる。気づいた時点ですぐ修正すること。修正前に入力した測定データは、再計算が必要になる場合がある。
対処法:施工計画書と照合しながら二重チェックして設定する。
「現場でネットが繋がらない」
SiteBoxはオフラインでも基本操作は可能。データはローカルに保存されて、ネット接続時に同期される。ただし、初回の設定やライセンス認証にはネット接続が必要なので、現場に行く前に済ませておくこと。
山間部の現場では電波が入らないことが日常的にある。オフラインで使えるのは地味にありがたい機能だ。
「操作が複雑で現場で手間取る」
SiteBoxは機能が多い分、蔵衛門やミライ工事2と比べると操作の学習コストが高い。最初の1週間は戸惑うと思う。
対処法:まず出来形測定+写真撮影だけに絞って覚える。 手書き機能や帳票作成は後から覚えれば十分。最初から全機能を使おうとすると挫折する。
まとめ
SiteBoxは「電子小黒板アプリ」というより、**「現場完結型の出来形管理ツール」**だ。
測定値の入力→写真撮影→データの紐付け→帳票作成——この一連の流れを1台のタブレットで完結させられるのは、SiteBoxならではの強み。出来形管理に時間を取られている施工管理には、導入する価値がある。
ただし、「電子小黒板で写真を撮りたいだけ」なら蔵衛門やミライ工事2の方がシンプルで使いやすい。自分の現場で何に一番時間がかかっているかを考えて、最適なアプリを選んでほしい。
電子小黒板アプリ全体の比較は「電子小黒板アプリおすすめ6選」にまとめている。
この記事を書いた人
SEKOBASE編集部 施工管理技士として現場で働く代表が運営する、建設業専門のテック情報メディア。「現場を知る者が、現場を変える」をモットーに、蔵衛門・電子小黒板・CCUSなどの現場DXツールの使い方から、施工管理技士試験の対策まで、現場目線の情報を発信しています。


