【建設業】一人親方への安全衛生の周知はどこまで義務?2027年の災害報告制度まで整理

一人親方への周知記録してますか?|2027年1月 災害報告制度スタート 義務化・法改正

一人親方に作業をお願いしている元請・下請の方へ。ここ数年、労働安全衛生法と関係する省令の改正が続き、「労働者ではない一人親方」も安全衛生の保護の対象になりました。2025年5月には法律そのものも改正され、2027年にかけて順番に施行されていきます。

この記事では、注文者・元方事業者として一人親方等に何をしなければならないのか、いつから何が変わるのかを、厚生労働省の通達とリーフレットに沿って現場目線で整理します。記事の最後に、周知と指示の記録に使えるExcel様式の無料配布があります。

いつ、何が変わったか(施行日ごと)

施行日主な内容
2023年4月1日危険有害な作業の一部を請け負わせる一人親方等に、作業方法・保護具使用の周知、設備稼働の配慮。同じ場所にいる労働者以外の人も立入禁止・退避・掲示の対象に(令和4年厚生労働省令第82号)
2025年4月1日危険箇所等での立入禁止・搭乗禁止・悪天候時の作業禁止・火気使用禁止・退避を、労働者以外の人にも適用。危険箇所で例外的に作業させる請負人への保護具等の使用の周知(令和6年厚生労働省令第80号)
2025年5月14日改正法の公布。注文者の配慮(安衛法第3条第3項)の明確化は公布日に施行
2026年4月1日元方事業者・注文者が講ずる措置の対象に、労働者以外の作業従事者(一人親方等)を含める
2027年1月1日個人事業者等の業務上災害の報告制度
2027年4月1日個人事業者自身への義務(特別教育の受講など)、作業場所管理事業者による連絡調整

2026年4月までの分はもう施行済みです。「これから準備すればいい」ではなく、すでに現場で求められている内容だと考えてください。

注文者・元方が一人親方等に対してやること

① 危険有害な作業の一部を請け負わせるとき(2023年4月〜)

対象は、有機溶剤・粉じん・石綿・酸欠など、健康障害を防ぐための措置が省令で決まっている作業です。作業の一部を一人親方や下請に請け負わせる事業者には、次のことが義務付けられました。

  • 特定の作業方法が決まっている作業は、その作業方法を請負人にも周知する
  • 労働者に保護具を使わせる義務がある作業は、請負人にも保護具が必要である旨を周知する
  • 請負人だけが作業する時間も、局所排気装置などの設備を稼働させる(または請負人に使用を許可する)等の配慮をする

「配慮」は、配慮さえすれば結果は問わないという意味ではなく、何らかの手段で労働者と同等の保護が図られるよう便宜を図る義務だと説明されています。

② 危険箇所で作業するとき(2025年4月〜)

立入禁止、搭乗禁止、悪天候時の作業禁止、火気使用禁止、事故時の退避は、同じ場所にいる労働者以外の人(一人親方、他社の労働者、資材搬入業者、警備員など。契約関係は問わない)も対象になりました。たとえば、杭打機などの車両系建設機械と接触するおそれのある箇所(安衛則第158条)や、移動式クレーンのつり荷の下(クレーン則第74条の2)の立入禁止は、一人親方にもかかります。

立入禁止とすべき危険箇所で例外的に作業させるために、労働者に保護具等を使わせる義務がある場合は、請負人にも保護具等が必要である旨を周知します。それ以外の場面でも、保護具や作業方法が決まっている作業では、請負人に周知することが推奨されています。

③ 元方事業者として(2026年4月〜)

改正法により、元方事業者が講ずべき措置(関係請負人への指導・指示、混在作業の統括管理など)の対象が、労働者から「作業従事者」に広がりました。建設現場では、一人親方も安衛法第30条の措置の対象に入ります。あわせて、一人親方などの作業従事者にも、事業者や元方の措置に応じて必要な事項を守り、指示に従う義務が定められました。

注文時の配慮も忘れずに。安衛法第3条第3項で、注文者は施工方法・作業方法・工期・納期などについて、安全で衛生的な作業を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならないとされています。

誰が、誰に対して義務を負うのか

  • ①②の周知・配慮は、請負契約の直接の相手方に対する義務です。一次下請は二次下請に、二次下請は三次下請に対して負います。
  • 作業の全部を請け負わせる場合は、単なる注文者の立場となり、①②の措置義務の対象になりません。
  • 複数の会社が同じ場所で作業する場合、立入禁止の表示は元方がまとめて行うなど、共同で行っても差し支えないとされています。

「周知」の方法と、記録の残し方

通達では、周知は次のいずれかの方法で行うこととされています。内容が複雑で口頭では伝えにくいときは、①〜③のいずれかによります。

  1. 作業場所の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
  2. 書面を交付する(請負契約時に書面で示すことも含む)
  3. 電子媒体に記録し、各作業場所で常時確認できる機器を置く
  4. 口頭で伝える

ここで正確に押さえておきたいのは、周知の記録やサインの保存は、通達に示された要件には含まれていないことです。また、周知は請負人が内容を理解したことの確認までは求めていません。請負人が自分の判断で保護具を使わなかった場合に、その責任を事業者に求めるものではないとも示されています。

それでも記録を残す意味はあります。口頭で伝えただけでは、あとで「いつ、誰に、何を、どの方法で」伝えたかを説明できません。新規入場時に周知書を渡して受領のサインをもらい、日々のKYで伝えたことを記録簿に残しておけば、監督署の確認や災害時の説明がしやすくなります。これは法令上の義務ではなく、実務上の備えと考えてください。

安全の指示で「偽装請負」にならないか

「一人親方に細かく指示すると労働者扱いされるのでは」と迷う方は多いと思います。厚生労働省は2025年3月の通知で、安衛法令に基づく立入禁止の措置や指導・指示は法律上の義務の履行であり、基本的にそれだけで直ちに労働者性を肯定する方向に働く事情とはならず、偽装請負と判断されることもないと考えられる、と示しています。ただし、法令違反の防止に必要な範囲を超えて作業内容や進め方を具体的に指示する場合は別です。安全の指示はためらわずに行い、記録には「安全衛生上の指示」であることが分かる書き方をしておくとよいでしょう。

これからの予定:2027年1月と4月

2027年1月1日:個人事業者等の業務上災害の報告

  • 一人親方が労働者と同じ場所で作業中に、業務が原因のけがや病気で死亡または4日以上休業したことを把握したら、「特定注文者」が遅滞なく、原則として電子申請で労働基準監督署に報告します。
  • 特定注文者とは、一人親方に仕事を請け負わせた注文者で、同じ場所で自らも仕事をしている者です(重層の場合は最も後次の注文者)。現場に入っている直近上位の会社と考えると分かりやすいでしょう。
  • 一人親方の側にも、休業したときに特定注文者へ報告する義務があります。報告を理由に取引停止などの不利益な取扱いをしてはいけません。
  • 特定注文者の報告義務は、罰則を伴わない義務規定とされています。

通達では、報告主体は被災した一人親方に報告義務があることを教えておくことが望ましいとされています。入場時の周知に「けがをしたら誰に連絡するか」を入れておくと、この準備にもなります。

2027年4月1日:一人親方自身の義務

労働者と同じ場所で作業する一人親方自身に、構造規格や安全装置を備えない機械の使用禁止、特定の機械の定期自主検査、危険・有害な業務に就くときの特別教育の受講などが義務付けられます。一人親方の方は、持ち込む機械の点検記録と、特別教育の修了証をそろえておきましょう。名簿で資格を確認しておくと、元請側も入場時にあわてずに済みます。

一人親方等 安全衛生周知・指示記録様式パック(Excel)

上の「周知」と「記録」を現場で回すための様式を用意しました。杭工事の現場で使う前提で作っていますが、工種を選び替えれば他の工事にも使えます。黄色のセルが入力欄、青字は記入例です。

  • 一人親方等名簿:氏名、屋号、職種、労災保険特別加入(加入団体・番号)、保有資格、緊急連絡先、入場日
  • 安全衛生周知書:新規入場時に1人1枚。工種をプルダウンで選ぶと、作業方法・保護具・立入禁止区域・墜落防止設備・退避・悪天候時の中止基準・災害時の報告先など10項目の文言が切り替わります。特記事項欄と本人の受領サイン欄つき
  • 周知・指示記録簿:日付、作業内容、周知した要点、対象者、周知方法、指示者、受領確認を時系列で記録(20行)
  • 工種マスタ:杭工事(回転貫入鋼管杭)、足場・とび、土工事、鉄筋、型枠、解体の6工種。文言は自社用に書き換えられます
  • 記入要領・法的背景:各シートの使い方と運用の順番

使い方は「名簿に登録 → 入場時に周知書で説明してサイン → 日々の指示は記録簿へ」の3ステップです。周知方法の欄は「口頭のみ」にせず、書面や掲示、KY記録と組み合わせておくと、あとで説明しやすくなります。周知書の根拠欄の施行時期は、この記事の表と照らして自社の運用に合わせてください。

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テンプレートは雛形です。本記事と様式は実務の参考として作成したもので、法的助言ではなく、法令への適合を保証するものではありません。実際の対応にあたっては、厚生労働省・労働基準監督署の最新情報を必ずご確認ください。

参考資料

  • 厚生労働省「個人事業者等の安全衛生対策について」ページ
  • 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」ページ
  • 「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」(基発0415第1号、令和4年4月15日)PDF
  • リーフレット「2023年4月1日から危険有害な作業を行う事業者は一定の保護措置が義務付けられます」PDF
  • 「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」(基発0430第4号、令和6年4月30日)PDF
  • リーフレット「2025年4月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について」PDF
  • 「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について」(基発0514第1号、令和7年5月14日)PDF
  • 「労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生法関係手数料令の一部を改正する政令等(個人事業者等関係)の施行について」(基発0330第1号、令和8年3月30日)PDF
  • 「(個人事業者等の業務上災害の報告に係る規定関係)」(基発0624第5号、令和8年6月24日)PDF
  • 「(個人事業者等の安全衛生対策の推進に係る規定関係)」(基発0526第1号、令和8年5月26日)PDF
  • 「注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項(労働基準法上の労働者性、いわゆる偽装請負との関係)について」(令和7年3月31日)PDF
  • リーフレット「労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて」PDF